How're you doing,Guys?

その日。
たまたまセレスティアに買い物に出たヴィクトールは、荷物を抱え、一服しようとたまたま近くにあったカフェに足を踏み入れた。
たまたまのたまたまが重なった、本当に偶然の偶然。
普段カフェなどに縁のないヴィクトールがなぜ、その時に限って入ろうと思ったのか。
思えば不思議なことだ。

外の寒さはその冬一番という冷え込みを記録していて、ふと吐き出す息があっという間に眼前を白く染める。
常春の聖地に暮らしていると、つい季節を気にすることもなくなってしまうのだが、ヴィクトールは冬が嫌いではなかった。
ピリッとした独特の空気や澄んだ視界に、思わず背筋が伸びる気がする。
買い物を終えて、すんなりと聖地に戻らなかったのは、セレスティアの今の季節が冬だったせいかもしれない。

カフェの扉を開けると、空調の暖かな空気がどっとヴィクトールにまとわりついてくる。
さっと見回せば、店内にはそこそこ客がいるが、騒がしさは感じない。
店の雰囲気は上々だ。
わざと入り口近くの窓際の席を選び、ヴィクトールは手にしていた荷物を隣の椅子へおろした。
こういう時、軍人だった過去をちらりと思い出してしまう。
今の立場で警戒する必要などほとんどないのに、身についた習性とは恐ろしい。
マフラーとコートを外せば、とたんに鎧を脱いだように楽な気持ちになる。
どっしりと腰を落ち着かせ、ウェイトレスにオーダーを告げた。

中の暖かさを示すように、窓はうっすらと曇り、枠の周辺にははっきりとした滴ができている。
なんとなく故郷の冬を思い出して、ヴィクトールの顔に笑みが浮かんだ。
エアコンなんていう気の利いた暖房器具はなく、窓際に置かれた大きなストーブがパチパチと火をたてていた家。
木枠の窓の結露は驚くほどの量で、滝のように流れる水をふき取るのが、毎朝の子供の仕事だった。
懐かしいあの家は、今もあの場所に存在しているのだろうか。

運ばれてきたコーヒーも薄目でヴィクトールの好みに合う。
ヴィクトールはゆったりとした気持ちで、窓の外を通る人々を眺めていた。


重い扉が開き、外からの冷えた空気がヴィクトールの頬をかすめる。
扉の影からその人影がのぞいた瞬間、店の空気が変わった。
特別派手な色を身に着けているわけでもなく。
大きな音を立てているわけでもないのに。
彼女が現れた瞬間、ハッと衆目が集まる。
それは彼女の稀有な美しさと洗練された所作のせいだろうか。
とにかく、人目を引かずにはいられない存在であることは間違いない。

きちんと後ろ向きに扉を閉めたロザリアは、ふっと視線をあげると、すぐにヴィクトールに気づいたらしい。
入り口近くにこんな大男が陣取っていれば、大抵の人間は目を向けるだろうし、ヴィクトール自身も気配を消していたわけではない。
思わぬ場所に知人を見つけたことへの驚きが消えると、すぐにロザリアはにこやかな笑みをヴィクトールに向けた。
「ごきげんよう。 こんな場所でお会いするなんて、思いもしませんでしたわ。」
真っ白なコートの裾が歩くたびにふわりと揺れる。
暖かそうなのに、羽のように軽く見えるのは、ロザリアの足取りが優雅だからか。

「こちら、よろしいかしら?」
ごく当たり前のように、ロザリアはヴィクトールの前の席に手をかけた。
たしかにこのまま、通り過ぎて別の席に座るのは、少し他人行儀な気もする。
別の宇宙とはいえ、補佐官と守護聖であり、妙な言い方になるが、苦楽を共にした関係なのだ。
軽くうなずいたヴィクトールに、ロザリアはさらに艶やかな笑みを浮かべ、コートのボタンに手をかけた。


白いコートの下から現れたのは同じく白のニットワンピース。
身体のラインをそれほど強調してはいないが、豊かなふくらみははっきりとわかるし、柔らかな印象がいつものドレスよりもかえって女性らしい雰囲気を醸し出している。
おまけに大胆に膝を出したミニ丈はヴィクトールには正視することも憚られるような短さだ。
すらりと伸びた形の良い脚を強調するニーハイブーツと合わせて、ロザリアのスタイルの良さを存分に際立たせている。
ファーのスヌードを外せば、綺麗な首筋から鎖骨のラインがのぞき、ハッとする程瑞々しい。
椅子に腰を下ろす姿までが優雅で、思わず見とれてしまった。

ロザリアが美しい少女であることは十分に知っていたはずなのに、いつもと違う場所であるせいか、改めてその美しさに驚かされた。
それは周囲の男性も同じなのか、かなりあからさまな視線も感じるが、ロザリアは全く気が付いていないようだ。
けれど、人並み以上に周囲に気が回るヴィクトール故に考えてしまう。
一体、周囲からはどんな風に思われているのか。
兄妹にしては年が離れているし、まさか恋人には見えないはずだ。
…親子でなければ、まあ、いい。


「お買い物ですの?」
ニッコリと尋ねられて、ヴィクトールは隣の椅子に置いた荷物に目を向けた。
「はあ。 まあ、そんなところです。」
「ふふ。ヴィクトールからプレゼントを頂けるあの子がうらやましいですわ。」
ヴィクトールはグッとせき込みそうになるのを堪えた。
目の前のロザリアは柔らかく微笑んでいて、まるで邪気という物が感じられない。
この直球な物言いも考えてみれば補佐官のときと同じ。
裏があるわけではなさそうだ。

「いえ、その。」
どうしてわかったのだろう。
特にプレゼントらしい包装でもないし、中身はまるで見えていないはずだ。
「あら、セレスティアの贈り物の園に一人で来るなんて、大切な人へのプレゼントを買う以外にないでしょう?
 ご自分の物でしたら、取り寄せれば済むことですし。」
手品のタネをばらすときのように楽しげに解説されて、ヴィクトールは言葉を失った。
さすが宇宙の補佐官は伊達ではない。
「なるほど。 たしかに自分がこんなところにいるというのは、なかなかありませんな。」
「ええ。 珍しいですわ。」

ロザリアの前に、紅茶が運ばれてきた。
コーヒーの強い香りとは違う、ナチュラルな香り。
白く細い指が優雅にカップを持ち上げる様は、まるで絵画を見ているような気分になる。
そこでヴィクトールはようやく、ロザリアの雰囲気がいつもと違う原因の一つに思い当たった。
補佐官のときはまとめ上げている青紫の髪が、今日はハーフアップにゆるく流れているのだ。
柔らかそうな巻き髪の一房が前へ落ちてくるのを、ロザリアが手で払っている。
それだけの動作ですら、洗練されて美しい。


「ヴィクトールにお尋ねしたいことがありますの。」
「なんでしょうか。」
つい改まってしまうのは、癖のようなものだ。
ロザリアも構わず続けた。

「恋人同士って普段はどんな風に過ごしていますの?」
何気なく聞かれた言葉に、ヴィクトールはまたせき込みそうになるのを堪えた。
「はあ…。」
答えに戸惑うヴィクトールをロザリアは青い瞳でじっと見つめてくる。

いささか暖房の効きすぎた室内のせいか、わずかに頬が上気し、紅茶で湿らせたばかりの唇は何もつけていないと思われるのにつやつやと輝いている。
吸い込まれそうな青い瞳に、思考までもが違った方向へ傾いていくようだ。
ロザリアが自分に特別な何かを感じていることなど、ありえないのに。
しばらく見つめ合っているような形になり、ヴィクトールの鼓動が本当におかしなリズムでなり始めた。
落ち着かなければ、と、やや冷めかけたコーヒーを強引に飲み干していく。

「わたくし、今まで男性とお付き合いしたことがありませんの。 
 ですから、あなたとコレットがどんなふうにお付き合いしているのか気になってしまって。
 単なる好奇心ですのよ。 …おかしいかしら?」
小首を傾げてヴィクトールに柔らかい笑みを浮かべるロザリア。
潤んだ青い瞳が、いつもの凛とした姿からは想像つかないほどコケティッシュな魅力に溢れている。
胸の上でキュッと両手の指を絡めるポーズも、結果として寄せられたようになる豊かな胸のふくらみも、目の毒過ぎて…焦る。


「あの、ロザリア様は、オスカー様とお付き合いしているのではないのですか?」
「え?」
本当にキョトンとロザリアはヴィクトールを見つめ返した。

「わたくしとオスカーが? そんなはずないじゃありませんの。
 オスカーはわたくしのこと、子供扱いばかりしてきますのよ。
 この間のパーティのときも、わたくしのホステスとしての技量を軽んじているのか、ずっと付きまとってきたんですの。
 どれほど他のお客様に恥ずかしい思いをしたと思いまして?
 今日だって、『一人じゃ危ない』とか、まるでお父様みたいなことを言いますのよ。
 ついてこようとするから、勝手に出てきましたの。」

ロザリアは本気で不愉快に思っているらしい。
綺麗な眉を顰め、唇をとがらせている。
彼女のこんな顔も初めて見るので新鮮でかわいらしいが…。

ヴィクトールは薄く曇る窓の向こうに目を向けた。
さっきから嫌でも目に飛び込んでくる人影。
地味なグレーのコートに身を包んでいても、その見事な体躯と鮮やかな髪色は隠せない。
それに、外は凍えるような寒さだというのに、彼の周りだけはまるで熱を発しているかのようなオーラが漂っているのだ。
思わず苦笑がこぼれた。

「自分とコレットは…恋人と言っても特別なことはありません。
 時間があれば食事やお茶を二人でとりますが…。
 あとはたまに出かけたり、執務の後、俺が彼女の部屋に出向いて話をしたりするぐらいです。」
「まあ、そんなものですの?」
「はい。」
少し不満そうな顔をしていたロザリアはすぐに瞳をキラキラさせてヴィクトールのほうへ身を乗り出してきた。

「その後は、おやすみのキスをするんでしょう? お出かけのときは手をつないだり。
 もしかして、二人で一つのジュースを飲んだり。 
 それから一緒にお菓子を作ったりもするのかしら?」

なるほど、ロザリアは恋人とそういう事がしたいのか、とヴィクトールは納得した。
コレットも手をつなぐときは恥ずかしそうにしているのに、妙に嬉しそうだし、おやすみのキスのときには顔を真っ赤にしている。
この年頃の少女が望む恋人とは、まだこんなにもかわいらしいことなのだ。
それならオスカーの手管が通じないのも無理はない。
しかし、このままこの会話を続けていれば、いつかとんでもないところまで…真夜中の出来事まで根掘り葉掘り聞かれそうな気がして、ヴィクトールはとっさに話題を変えた。


「そういえばロザリア様もお買い物ですか?」
ハッと我に返ったのか、ロザリアは恥ずかしそうにほほ笑むと、こくりと頷いた。
「ええ。手袋を買いに来ましたの。 
 わたくし、ね。」
ふいにロザリアの手が目の前に伸びてきて、ヴィクトールはぎょっと固まった。
テーブルの上に置いたまま握っていた自分の手。
傷だらけのその手の上に、ロザリアの白い手が重なったのだ。

「手がとても冷えてしまうんですの。 ほかの場所はそんなことありませんのに。 不思議でしょう?
 だから手袋が欠かせないのですけど、取り寄せても素材やサイズが気に入らないことが多くて。
 セレスティアができてからは、なるべく自分の足で探すことにしていますのよ。」
たしかに、重ねられた陶器のような滑らかな肌はひやりとしている。
上気した頬に比べれば、異質なほど冷たい。
「まあ、ヴィクトールの手はとても暖かいんですのね。」
潤んだ青い瞳でニッコリとほほ笑まれて、ヴィクトールの心臓が跳ねあがった。

これは大変だ。
ヴィクトールの背中にひやりと冷たい汗が流れ落ちる。
自分はいい。
長い軍隊生活で培われた自制心はたいていのことには動じない。
かなりドキドキさせられているとはいえ、今の状態が自分への特別な好意だと勘違いするほど子供でもない。
だが、もしも、ここにいるのが、若い男だとしたら…。
間違いなく、陥落する。

目の前のロザリアは相変わらず邪気のない顔で柔らかくほほ笑んでいる。
世間知らずのお嬢様は大切に育てられて、自分が男を惑わすような存在だなんて考えた事もないのに違いない。
彼女のような女性を魔性というのだろう。
無邪気さに振り回されるのは、いつだって男の方なのだ。
ヴィクトールは神鳥宇宙の守護聖達の顔を思い浮かべ、少し同情していた。
そして、彼女に恋をしている彼はさらに気が気ではないだろう、とも。

すると。

ちぎれそうな勢いでカフェの扉があき、大きな影がぬうっと現れた。
影は窮屈そうに背をかがめて扉をくぐると、緋色の髪をうるさげに振り、さっと辺りを見回している。
店に入ってきた瞬間に、衆目を集めるオーラ。
大きな体躯のせいだけではなく、人を引き付けてしまう端正な容姿なのだから仕方がない。
ロザリアのときとは逆に、カフェ中の女性が色めきだつのがわかる。
そんな様子には慣れているのかオスカーは気に留めた様子もなく、扉近くの正面に座っていたヴィクトールにすぐに気付くと、薄氷の瞳を細めた。

「よう。…奇遇だな。」
その時、オスカーの背に一瞬揺らいだ殺気にヴィクトールはたじろぎ…今の状況を理解した。
4人掛けとはいえ、さして大きくもないテーブルに向かい合って座っているロザリアと自分。
そして、そのテーブルの上で二人は手を重ね合っているのだ。
実際は少しも疚しいことなどないのだが、説明するのは難しい。
しかし咄嗟にロザリアの手を振り払うこともできないまま、ヴィクトールはオスカーと見つめ合っていた。

「あら、オスカーでしたの? …本当に偶然ですこと。」
当のロザリアは二人の間の気まずい空気に全く気が付いていないらしい。
けれど、オスカーが追ってきたことはわかっているのか、不機嫌そうに横目でオスカーを睨み付けている。
が、その拍子に、ロザリアの手が離れたのは幸いだ。
ヴィクトールはテーブルの上の手をさっと膝へと引っ込めた。
全く持って理不尽としか言いようのないオスカーの殺気なのだが、本気で決闘を申し込まれる前に引いておく方が無難だろう。

「今日は不思議な日ですな。 
 俺がたまたまカフェに入ろうと思ったのも珍しいし、そこにロザリア様がいらして、オスカー様までとは。」
暗に待ち合わせなどではなく、本当に偶然なのだとオスカーに告げた。
言い訳するつもりはないが、どうやらオスカーには伝わったらしく、殺気が霧散している。
意外なほど嫉妬深いオスカーの様子に、ヴィクトールは内心の笑いをかみ殺した。
いくら時を超えて生きていて老成しているとはいえ、オスカーはまだ20歳過ぎの青年なのだ。
自分とは10以上も年が違う。
子供じみた嫉妬も、本気の女性にはなかなか素直になれない感情も、そう思えばほほえましい。

「女神の隣に座る栄誉を俺に与えてくれないか?」
ロザリアの荷物が置いてある席の背もたれに手をかけ、オスカーが尋ねている。
あんなふうに気障ったらしい言い方をすれば、ロザリアの癇に障るだけだとわかっているだろうに。
ロザリアを怒らせて楽しんでいるとしか思えない。
まるで、好きな子をからかう子供。 
するとロザリアは無言のまま、席に置いてあったバッグとコートを手にとり、いきなり立ち上がった。

「どうぞ。わたくしは失礼しますから。 お二人でお茶をなさるとよろしいわ。」
さっとスヌードをつけ、コートを羽織ると、ロザリアはレジへと歩き出す。
慌てたように後を追うオスカーをロザリアの青い瞳が冷たく睨み付けた。
「何も注文なさらずに出るだなんて、お店に失礼ですわよ。
 では、ヴィクトール。 楽しかったわ。 またお会いしたいですわね。」
優雅ににっこりとほほ笑んだロザリアはさっさと会計を済ませると、店を出てしまった。


「くそっ。」
小さな舌打ちをヴィクトールは聞き逃さなかった。
そして、ついに我慢していた笑みがこぼれてしまう。
「…なにがおかしい。」
口調は怒っていても、オスカーの瞳は怒っているというよりも困っているようだ。
オスカーにしてみれば、なぜこうなるのか、きっと理解できないのだろう。
容姿端麗で武芸にも優れ、およそ女性に嫌われることなど考えたこともなかったオスカーが、初めて戸惑う相手。
老婆心とは思いながらも、ついヴィクトールは言ってしまった。

「オスカー様はロザリア様にもっと真正面からぶつかるべきです。
 純粋なあの方は、きっと駆け引きなどわかりますまい。
 それに女性というのは、100の思わせぶりな態度よりも1つの言葉を大切に思うものです。
 オスカー様の真摯な気持ちを伝えてみてはいかがですか? きっと悪い結果にはなりません。」

森の湖でヴィクトールが想いを告げた日。
コレットは心から喜んでくれた。
立場の差も年齢の差も関係なく。
ヴィクトールが真心をささげたからこそ、コレットも同じように真心で返してくれたのだと、信じている。


ヴィクトールの言葉を聞いたオスカーは、一瞬目を丸くして、すぐにふっと目を細めるような笑みを浮かべた。
普段の強気が隠れた、切ないような、その笑みはヴィクトールから見ても魅力的で。
オスカーの胸の内をほんの少し覗いた気がした。

「まさかお前に女性について指南を受けるとは思わなかったな。」
「いえ、ただの戯言です。 出過ぎたことを言いました。」
「…だが、お前とあちらの女王が恋人として上手く行っているのは事実だ。
 幸せを手に入れた男のいう事なら、聴いてみるのも悪くはないかもしれないな。」

今度はいつもの強気な笑み。
男から見てもほれぼれするような男、とは、まさにオスカーのような人間を指すのだろう。

「俺の分のコーヒーを頼む。ヴィクトール。 お姫様が逃げちまう前に、捕まえてくる。」
「わかりました。 責任をもって完遂します。」
「頼んだぜ。」

ひらり、とロングコートをひるがえし、オスカーは扉の向こうへ消えていった。


ふとヴィクトールが薄曇りの窓の外を見れば、白いコートを着たロザリアが通りの向こうに立っている。
本気で走って逃げたのなら、とっくにもっと遠くへ行っていてもいいはずだ。
ロザリアもまた、オスカーが追いかけてきてくれるのを、待っているのだろう。
他の男の前では魔性でも、彼の前では一人の乙女。
全く、若いというか、素直じゃないというか。
お似合いすぎる二人のかわいらしい行動に、ヴィクトール自身の気持ちまで明るくなってくる。

この後、コレットに会いに行く。
衝動買いしてしまったプレゼントをコレットは喜んでくれるだろうか。
誕生日プレゼントのお返しのプレゼントなんておかしいと、笑われてもいい。
似合うと思ったと素直に言えば、コレットは必ずあの優しい笑顔をみせてくれる。
ちらりと腕時計を確認すると、約束の時間までは、ちょうどコーヒー一杯程度。
オスカーに与えられた任務を遂行するため、ヴィクトールはウェイトレスを呼び止めると、2杯目のコーヒーを注文したのだった。


FIN
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